烙印の紋章 12 あかつきの空を竜は翔ける(下) 杉原智則
シリーズ最終巻です。去年四月ごろから読み始めましたが、順調に刊行されて終わりを迎えられたのがよかったです。
感想としては、80%の満足と、20%のもやもやが残る感じです。
皇帝との決着は前巻の問答でついてましたので、VSアリオンの三国連合の戦いと帝都での政変の決着が主題でした。
アリオンとの戦いはめまぐるしいほど場面が変転し、攻守所を入れ替えましたが、オルバとカセリアの対決はオルバの貫禄勝ちといったところでしょうか。戦場を同じくした三人の皇子、王子、大公がアリオンへの危機意識を共有して以後の三国間の平和に繋がったため平穏が訪れたと思えばこの戦いにも意味があったのでしょう。
また、帝都では肉体をのっとられようとしたグールが自決し、それによって意図が崩壊した竜神教陣営が撤退したことによりオルバ側の勝利になりました。ただ、結局撤退した竜神教はそのままで決着がつかないし、どうなったかという話はエピローグにも出てきません。
そもそも前の巻に東の強国アリオスの王子なんてのが新キャラとしてでてきて、それがこの巻で決着するわけがないですね。のちの歴史でもライバルとなるという話だけですが、それはそれでよかったと思います。
ただ、やはり、こういった後がはっきり書かれない、解決されてない事項があまり多いと中途半端で、すっきりしないです。
・死んでいった人たち。
カイン・・・老後の話なんかするから。死にフラグを立ててしまったキャラですが、予想通り死亡しました。彼の死は今後「オルバ」としての出番がなくなったということですね。
グール・・・敵ではありましたが、決して悪逆ではなかった皇帝。前巻の冒頭の姿からもそうですが、オルバの未来の一つでもあるのでしょう。グールの妻がなくなったのと同じように、ビリーナが亡くなったら・・・、オルバも同じようになってしまうのかもしれません。
オーバリー・ビラン・・・まぁ死ぬしかなかったキャラです。ビリーナに理解されて、少しは報われた終わりでした。てっきりイネーリあたりを巻き添えに死ぬかと思ってましたが、その妹のフローラを人質にする形に。そういえばフローラも物語後どうなったか話がないです。せっかく独り立ちの決意してたのに。
エピローグはその後の話を各キャラ少しづつ入っていますが、あまり決定的な未来の話はでてこなくて、これまたもやもや。
戦勝を収めたエンデのエリックの話では、「エンデを守り立てたとも、エンデが地上から消え去る原因の一端を作ったとも言われる」なんて言われてますが、エンデ公国は滅びるの?そこで話を切られてもなぁ。
また、リャリド(正直この地名覚えがないのですが)の話では、「歴史上、六度の対アリオン戦にて、二度、直接あいまみえたオルバとカセリアだが、リャリド王家に伝わる秘蔵の歴史書のみ「三度」相対したとなっている」とのことですが。で、なにが言いたいのかわからない。その一回にどんなことがあったのか、想像する欠片がないから意味がわからない。なにか本編に伏線があったかと思いましたが思い出せないので、なにやら意味深な言い様なのですが、よくわからん話です。
せめてオルバの正体を知っているイネーリとの対峙や、ビリーナとオルバの結婚の話などは載せられなかったのかなぁと思います。というか、オルバとビリーナの会話が最後しかない。ヒロインなのに・・・。
オルバが皇帝となり、三国と西方との関係を作ったと言う意味では物語はまとまっているのですが、以後の話をぼかしているうえに、ちょこちょこと情報を与えようとしているので、なんだかもやもやしてしまいました。
なにはともあれ、無事完結できてよかったです。もう一冊くらい外伝とか出してくれないかなぁ、などと思ったりしています。