そういえば、購入したあとの土曜に一気に読んだのですが、感想を書いてなかったので上げてみます。
時のみぞ知る 上下 ジェフリー・アーチャー
サイトや帯の宣伝文句の通りに、アーチャーの最高傑作になる予感がします。
章立てはアーチャーがよく使う形で、語り口がそれぞれの登場人物に変わって、同じ時間をそれぞれの視点で眺めつつ少しづつ先に進むというかたちです。このかたちだと、一つの場面を様々な角度から見れるので、その分理解が深くなって、登場人物に対する共感も深まりました。
労働者階級に生まれたハリー・クリフトンを主役に、貴族階級で親友のジャイルズ・バリントンら、多くの友人とともに真っ直ぐに成長する物語であり、バリントン家の主人ヒューゴーとハリーとに関わる謎が物語の影を差しています。
この上下巻は、ハリーが20歳頃までの話ですが、非常に真っ直ぐな育ち方をしています。貧しい暮らしでしたが、親身になってくれる大人がいて、才能を見出して成長させてくれる人もいて、親友もいる中で難関高校(高校という名前ではないですが)からオックスフォード大学に進学しています。苦悩や大変ショックな出来事はありますが、復讐や殺意といった暗いテーマは入らずに、基本的に前向きな物語ですので、そのあたりは趣味に合う合わないはあるかと思います。
とにかくどんどん引きずり込む話の展開が、読みやめ時を作ってくれません。最期の2ページの展開もまた見事で、次の巻に対する気持ちが掻きたてられます。
あえて難を述べれば、作者のこれまでの作品、「チェルシーテラスへの道」や「ケインとアベル」などとなんとなーく似たイメージが掘り起こされて、どっかで読んだような展開・・・?という気持ちにさせられる所もあります。ただ、今作のハリーは先の物語よりは少しあとの時になるので、先の作品では中年で迎えた第二次大戦を、大学に入学がきまる頃に迎えることになります。
このクリフトン年代記シリーズは三部作以上あるとのことで、まだ一部が終わったところなのでこの物語が例えば先述の「チェルシーテラス」のようにサクセスストーリーにまとまっていくのか、「ケインとアベル」のように壮大な人間ドラマとしての面が大きくなっていくのか、まだまだ分かりませんが、どちらにしても早く続きを読みたくなる作品なのは間違いないです。もう英国では3巻まで出ているそうなので、早いところの翻訳が待ち遠しいです。